相続により賃貸用不動産を取得した場合
こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。
今回のコラムでは、「相続により賃貸用不動産を取得した場合」についてご説明致します。
被相続人が所有していた賃貸用不動産(ここでは貸事務所を前提とします)を相続により取得した場合、所得税や消費税の確定申告の取扱い、また、提出しなければならない各種届出書にはどのようなものがあるかについてご説明致します。
所得税の取扱い
相続発生前の収入
その年の1月1日から相続発生までの期間に対応する収益及び費用は、被相続人に帰属することとなりますので、相続発生日から4カ月以内に「準確定申告書」を被相続人の納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。なお、実務的には、事務処理の煩雑性を考慮して「日割り」ではなく「月割り」で申告することが大半です。よって、相続発生月の収入は、お亡くなりになられた日を考慮し、被相続人か相続人のいずれかにその月の全ての収入を帰属させることになります。
相続発生後の収入
相続発生後からその年の12月31日までの期間に対応する収益及び費用は、その賃貸用不動産を取得した相続人に帰属することとなりますので、その年の翌年3月15日までに「確定申告書」を相続人の納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。
減価償却資産の取扱い
賃貸用不動産から発生する収入に対応する費用の一つとして「減価償却費」があります。そして、この減価償却費を計算する要素として、①取得価額、②残存帳簿価額、③耐用年数、④償却方法、⑤取得時期の5つの要素があります。
それでは、被相続人から賃貸用不動産を相続した相続人の減価償却費の計算上、どの要素を被相続人から引き継ぎ、どの要素が引継がれないかをご説明致します。
- 被相続人から引継がれるもの
①取得価額、②残存帳簿価額、③耐用年数
(所令126-2) - 被相続人から引き継がれないもの
④償却方法、⑤取得時期
(所基49-1)
補足説明と致しまして、上記にあるように④償却方法と⑤取得時期は被相続人から引き継がれないため、被相続人が「旧定額法」で減価償却費を計算していたとしても、平成19年4月1日以降に相続により賃貸用不動産を取得した場合には、相続人は「定額法」により減価償却費を計算することとなりますので、注意が必要です。
消費税の取扱い
相続人が免税事業者である場合(事業を営んでいない場合も含む)
相続発生年度の納税義務の判定
被相続人の基準期間における課税売上高のみで納税義務の有無を判定します
相続発生年度の翌年及び翌々年の納税義務の判定
被相続人と相続人の基準期間における課税売上高を合算して納税義務の有無を判定します。
(消法10、消基1-5-4)
相続人が課税事業者である場合
課税事業者という事は、相続人の基準期間における課税売上高が1,000万円を元々超えている為、変わらず納税義務があります。
被相続人が複数の賃貸用建物を所有しており、相続人が2人以上いる場合
例えば、被相続人が2棟の賃貸用建物を所有しており、2人の相続人がそれぞれの建物を相続により取得した場合には、各相続人の納税義務の有無を判定する被相続人の基準期間における課税売上高の金額は、その基準期間における課税売上高全体の金額ではなく、各建物から発生する賃貸収入の金額を用いることとなりますので、注意が必要となります。 (消法10③)
提出すべき書類とその提出期限
相続により賃貸用不動産を取得し、新たに個人事業主になったという前提でご説明させて頂きます。
所得税
- 開廃業等の届出書
提出期限:遅滞なく - 青色申告の承認申請書
提出期限:相続発生日が 1月1日~ 8月31日 ⇒ 相続発生日から4カ月以内
相続発生日が 9月1日~10月31日 ⇒ その年の12月31日
相続発生日が11月1日~12月31日 ⇒ その年の翌年2月15日
ここで、ご注意頂きたいのが、上記の取扱いは被相続人がそもそも青色申告を行っているという前提であり、被相続人が白色申告である場合には、上記にかかわらず、青色申告の承認申請書の提出期限は、業務を承継した日から2ヶ月以内となりますので、注意が必要になります。
イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
執筆日:平成28年11月21日
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