住宅取得等資金の贈与を受けて自宅を取得する場合

住宅取得等資金の贈与を受けて自宅を取得する場合

こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。今回のコラムでは、「住宅取得等資金の贈与を受けて自宅を取得する場合」についてご説明致します。

マイホームの取得を促進する税制の一つに住宅取得等資金の贈与税の非課税制度があります。本コラムでは、この非課税制度の概要、適用要件、贈与者が死亡した場合の取扱い、贈与を受けた資金で住宅ローンを返済した場合等についご説明させて頂きます。

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度 

制度の概要

父母や祖父母(直系尊属)から住宅用家屋を新築、取得又は増改築等(以下、「取得等」という)をする為の金銭の贈与を受けた場合で、その贈与を受けた金銭を住宅用家屋の取得等の対価に充て、一定の要件を満たすときには、次に掲げる非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税になります。

非課税限度額

非課税限度額は、次の1と2の組み合わせにより決定します。

  1. 住宅用家屋の取得等の契約日
  2. 住宅用家屋の種類
2.住宅用家屋の種類
 1.住宅用家屋の取得等の契約日省エネ住宅等省エネ住宅等以外
 平成28年1月1日~平成32年 3月31日1,200万円700万円
 平成32年4月1日~平成33年 3月31日1,000万円500万円
 平成33年4月1日~平成33年12月31日800万円300万円

受贈者の要件

  • 親族要件
    贈与者の直系卑属(子や孫)であること
  • 年齢要件
    贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
  • 所得要件
    贈与を受けた年の所得金額が2,0000万円以下であること

住宅用家屋の要件

新築物件の場合

  • 面積要件
    家屋の登記簿謄本上の面積が50㎡以上240㎡以下
    ※マンションなどの区分所有建物の場合には専有部分の床面積
  • 用途要件
    床面積の2分の1以上を居住用として使用

中古物件の場合

  • 面積要件、用途要件
    新築物件と同じ
  • 築年数要件
    取得の日以前20年以内に建築されたものであること
    ※耐火建築物の場合には25年以内

贈与者が贈与をした年に死亡した場合

贈与者が住宅取得等資金の贈与をした年に死亡した場合、その住宅取得等資金の受贈者が贈与税の申告書を期限内に行うことにより、非課税制度の適用を受けることが出来ます。よって、その住宅取得等資金の贈与は非課税となり、また、相続発生以前3年内に行った贈与財産の加算規定の適用も受けることはありません。
ただし、贈与税の申告書を期限内に提出していない場合には、この非課税の特例を受けることが出来ず、贈与をした金額は相続財産として申告する必要が出てきますので注意が必要となります。

措通70の2-14

住宅資金贈与者がその贈与をした年の中途において死亡した場合において、特定受贈者が贈与税の申告書を期限内に提出しない場合には、この特例の適用はなく、贈与された住宅取得等資金の金額は、相続税法第19条第1項、同法第21条の15又は第21条の16の規定により、その贈与をした者の死亡に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入されます。

住宅取得等資金の贈与を受けて住宅ローンを返済した場合

住宅ローンを組んで自宅を購入した同一年中に親から現金の贈与を受け、その現金でローンの返済をし、その贈与を受けた現金を住宅取得等資金として贈与税の非課税の特例を受けるものとして申告したケースで、売買代金の支払い後に贈与を受けた金銭は住宅取得等資金に該当しないとして特例の適用が否認された裁決事例が平成27年10月9日にありましたので、ご紹介させて頂きます。

事実関係

平成21年2月 1日:自宅の売買契約を結び、手付金として100万円支払
平成21年4月24日:××円の贈与を受ける
平成21年5月15日:2,600万円借入れる旨の金銭消費貸借契約書の締結 
平成21年5月15日:残代金2,390万円支払
平成21年5月19日:××円の贈与を受ける
平成21年6月22日:借入金の内金××円を返済

上記の事実関係から確認できますように、時系列でみると、平成21年5月19日に贈与を受けた金銭は、自宅の売買代金支払い後に贈与を受けておりますので、「住宅用家屋の取得等の対価に充てられていない」こととなります。考え方によっては、一時的に借入をしただけであり、実質的には贈与を受けた金銭で住宅を取得したとも言えないことはありませんが、優遇規程は立法趣旨も大事ですが、形式的な要件をしっかりと満たしておくことの重要性を改めて感じさせられた裁決事例でした。

 

イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆日:平成29年1月23日
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