大手量販店との取引について
…利益率が低い取引は慎重に検討しましょう。
「大手量販店で商品を取り扱ってもらえることになりました!
値段は厳しいですが大幅な売上増が見込めます!」と喜んだ数ヶ月後、「売上高は目論見どおり伸びましたが、利益は半減、資金繰りも厳しくなってしまいました・・・」という場面に遭遇することがしばしばあります。
大手量販店との取引は魅力的ですが、たとえ相手が大手であっても、安易に価格を下げて取引を行うことは、良い結果に繋がらないケースが多いようです。冷静に採算を判断することをおすすめします。
原価3,000円の商品を、5,000円で販売した場合と、4,000円で販売した場合を比べてみます。5,000円の場合、500個販売すれば100万円の粗利益を獲得できます。同じ100万円の粗利益を獲得するのに、4,000円の場合は1,000個の販売が必要です。
5,000円で販売するより、4,000円で販売した方が多く売れることは予想できますが、販売個数が2倍になってはじめて粗利益は同等になります。
冒頭の企業様は、大手量販店と取引を開始したにも関わらず、売上高が1.5倍程度しか伸びなかったため、従来よりも粗利益率が低下しました。また、販売個数が大幅に増えたことにより、配送コストと在庫管理のコストが増加しました。さらに、欠品が許されないと在庫を多めに抱えたため、利益が半減しただけでなく、資金繰りまで大きく悪化しました。
「売上高が大きい」「大手企業と付き合いがある」というのは必ずしもメリットばかりではありません。
- 製造の機械化を行うことで製造コストを引き下げることができる。
- 多額の資金を費やして大量仕入れを行うことで仕入コストを引き下げることができる。
など、しっかりとした根拠に基づく価格の引き下げであれば問題ありませんが、単に売上が増えるからというだけで価格を引き下げるのは正しくありません。
資金や人的資源が不足している中小規模企業の場合、低価格大量販売は難しいという認識を持ち、低価格路線に安易に流れるのではなく、適正な利益で販売できるよう努力するのが正解と考えます。「大手から声がかかった!」というのは、「実は採算が合わないため誰もやりたがらない仕事だから話が回ってきた。」ということも往々にしてあります。
慎重に検討してください。