創業融資
創業融資とは
事業を始められる方は、「創業融資」といった言葉を耳にされることがあると思います。一般的に創業融資とは、①日本政策金融公庫が行っている新創業融資制度、②自治体・銀行・保証協会が協力して行っている制度融資の2つを総称して「創業融資」と呼びます。では、どちらの制度を利用した方が良いかというと、あくまで個人的な見解となりますが、日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用するのが良いと思います。その理由として、申し込みから融資実行までのスピードの速さ、借入することが出来る金額の大きさ、そして、何といっても無担保、無保証という大きなメリットが日本政策金融公庫の新創業融資制度にはあるからです。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫の新創業融資制度の概要は下記のようになっています。
※日本政策金融公庫HPより抜粋(平成31年3月31日現在)
ご利用いただける方 | 次の1~3のすべての要件に該当する方
|
---|---|
資金の使いみち | 事業開始時または事業開始後に必要となる事業資金 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
ご返済期間 | 各種融資制度で定めるご返済期間以内 |
利率(年) | こちらをご覧ください。 |
担保・保証人 | 原則不要 ※原則、無担保無保証人の融資制度であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっております。法人のお客さまがご希望される場合は、代表者(注3)が連帯保証人となることも可能です。その場合は利率が0.1%低減されます。 |
日本政策金融公庫の新創業融資制度について、あくまで私見となりますが、補足させて頂きます。
自己資金要件
ご利用いただける方の自己資金要件として、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方となっています。つまり、額面通りに解釈すると1,000万円の総事業費の場合は、100万円以上の自己資金があれば残りの900万円の融資を受けることができることになりますが、実際には、よほどの革新的な技術やノウハウがない限り総事業費の9割の融資を受けることは難しいように思います。一般的な考え方としては、総事業費の4割~5割位、少なくとも3割以上の自己資金を貯めておかないと、創業融資を受けるのは難しいように思います。
自己資金の定義
自己資金の定義ですが、たとえ本当に自分で貯めたお金であったとしてもタンス預金や現金で貯めたお金は自己資金としては認められません。自己資金とは、事業継続中はその事業のみに使うことが出来るお金のことを意味し、途中でどこかに抜けていかないお金であるという事を日本政策金融公庫が書類上で確認できる必要があります。
よって、タンス預金や現金で貯めたお金は、その貯蓄の過程が通帳から確認できず、融資を受ける直前に通帳に入れたとしても、日本政策金融公庫からすれば、一時的にどこかから借りてきたお金かもしれないという疑念をもち、自己資金として認められない場合があります。
そのような疑念を持たれないように、自己資金は、貯蓄の過程が確認できる預金や定期積立などで貯めておく必要があります。
融資限度額
融資限度額ですが、新創業融資制度では、3,000万円(うち運転資金1,500万円)以内となっていますが、初めて事業を開始する場合の総事業費は1,000万円以内が望ましいと金融機関は見ているようです。いきなり大きな器で始めるのではなく、小さく生んで、それから徐々に大きくしていくスタンスを日本政策金融公庫は好んでいるように思います。もちろん、新たに始める事業内容やその方の会社員時代の業績・保有する技術・ノウハウなどによって創業時の総事業費は変わってくるとは思いますが、一般的には、1,000万円以内で最初の総事業費を考えるのが良いと思います。
創業融資は出来るだけ受けた方が良い
創業後、未来永劫どんなことがあっても銀行からお金を借りない、思想・哲学・経営方針として他人資本は活用しないという方は、創業融資を受ける必要はありませんが、将来的に資金が必要になった場合は金融機関からの借り入れを検討すると考えている方は、『是非』創業融資を受けてください。というのも、日本政策金融公庫は(日本政策金融公庫に限らず全ての会社に共通して言えると思いますが)、取引実績を重んじる会社ですので、創業融資を受けて、その後、しっかりと返済実績を作っておけば、二回目融資を受ける際は、比較的審査が通りやすくなり、また、申し込みから融資実行までのスピードも早く、借入実績がある為に融資可能額も大きくなります。さらに、創業融資は、一度も会社の決算を終えずに申し込むことが出来ますので、会社の業績に関係なく融資審査が行われる為、ある意味、一番借りやすいタイミングが創業融資という事になります。
一方、創業融資を受けず、資金が必要になった時に融資の申し込みをした場合、日本政策金融公庫にとっては、初めての取引となる為、決算書や会社の財務内容を十分に精査する必要があり、結果として融資申し込みから融資実行までの時間が長くなり、また、借入実績がないが故に初回の融資可能額はあまり大きな金額を期待することが出来ないなどのデメリットが生じます。
従って、今後事業の展開によっては金融機関とお付き合いをすると考えている経営者様は、ある意味一番融資を受けやすい創業時に創業融資を受けることをお勧め致します。