未支給年金の所得税と相続税の課税関係
こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。
今回のコラムでは、「未支給年金の所得税と相続税の課税関係」についてご説明致します。
日本では、20歳以上の成人に対して国民年金への加入を義務付けています。従って、65歳以上の大半の方が老後の生活資金として年金を受給しています。本コラムでは、年金受給者に相続が発生した場合、年金について税務上の取扱いがどのようになるのか、特に相続前後に支給を受ける年金や「未支給年金」の取扱いについてご説明させて頂きます。
国民年金の概要
国民年金は、65歳以上の方に対して、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に、前月分と前々月分が振り込まれます。具体的にご説明致しますと、例えば10月15日に振り込まれる年金は、9月分(前月分)と8月分(前々月分)に該当します。
また、年金受給者に相続が発生した場合、相続が発生した月分まで受給する権利がありますので、例えば、8月2日に相続が発生した場合には、8月分の年金までは相続人からの請求により受給することが出来ます。
未支給年金の定義
「未支給年金」という言葉を聞いたことがあると思いますが、未支給年金の厳密な定義をご存知の方は少ないかと思いますので、ここでは未支給年金の定義をご説明致します。
未支給年金とは、「相続発生時点で受給していない年金」のことを言います。ここで、相続発生時点で受給していないとは、受給権の有無ではなく、生きている間に、実際に年金の受取りがされていない年金を意味します。それでは、具体的な数値を用いて未支給年金についてご説明致します。
- 10月16日に相続が発生した場合
10月15日振込分(9月分と8月分)は生前に受取っている為、10月分のみが未支給年金という取扱いになります。 - 10月14日に相続が発生した場合
10月15日振込分(9月分と8月分)は生前に受取ることが出来なかった為、10月分、9月分、8月分の年金が未支給年金という取扱いになります。
所得税の課税関係
被相続人の課税関係
被相続人は、その年の開始から相続発生までの収入について準確定申告を行わなければなりません。年金は所得区分上、雑所得に該当しますが、相続発生年度の年金収入はどのように計算されているのかという疑問が生じます。
結論から申し上げますと、被相続人が相続発生までに実際に受取った年金振込額の合計金額となります。つまり前項でご説明致しました「未支給年金」については、相続発生時点で実際に受取ることが出来なかった年金額となりますので、被相続人の年金の源泉徴収票に記載される支給額には含まれない金額となります。
相続人の課税関係
未支給年金は、被相続人の収入には該当せず、相続人の収入に該当します。よって、未支給年金が多額になる場合には、未支給年金の受給を受けた相続人が確定申告を行う必要がありますが、未支給年金は所得区分上、一時所得に該当しますので、年間50万円の特別控除があるため、その特別控除額を超える多額の未支給年金とならない限りは、確定申告をする必要はありません。【所基通32-2】
相続税の課税関係
未支給年金は、前項でご説明しました通り、被相続人に帰属する収入ではなく、相続人に帰属する収入となります。従って、被相続人の財産(未収入金)に該当しない為、相続税の課税関係が生じることはありません。
イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
執筆日:平成28年12月5日
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