相続税の小規模宅地の特例
こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水と申します。今回のコラムでは、相続税の代表的な特例である「小規模宅地の特例」についてご説明致します。
平成27年度の税制改正により相続税の基礎控除額が引き下げられ、課税の裾野が広がったように思われがちですが、大半のご家庭では、この小規模宅地の特例を効果的に活用することにより、相続税の申告義務は生じたとしても、相続税の負担は生じないと思いますので、ぜひ理解しておきたい特例です。
本コラムでは、この「小規模宅地の特例」のうち、比較的ご質問が多い「特定居住用宅地等」と「貸付事業用宅地等」についてご説明させて頂きます。
小規模宅地の特例の内容
制度趣旨
被相続人又は被相続人と生計を一にする親族が、居住用又は事業用として使用している宅地は、被相続人の相続発生後においても、残された相続人の生活基盤を維持していくうえで重要な財産であるという位置づけから、他の財産と同じように相続税を画一的に課税するのではなく、最低限必要な面積部分については大幅な評価減を適用し、その居住用又は事業用の宅地に対する相続税の税負担を緩和するために設けられている特例です。
制度の内容
被相続人の相続開始の直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にする親族の居住用又は事業用として使用されている宅地については、一定の要件を満たす相続人が相続した場合に限って、限度面積まで80%(貸付事業用は50%)の評価減を受けることが出来る制度です。
※「生計を一にする」につきましては、下記リンク先のコラムでご説明しておりますので、ご興味がある方はご覧頂ければ幸いです。
特例の対象となる宅地の種類
特定居住用宅地等
被相続人の居住用に使われていた宅地
相続発生直前において、被相続人の居住用に使われていた宅地は、次のA又はBに該当する者が取得し、それぞれの要件を満たせば、330㎡まで80%の評価減を受けることが出来ます。
A相続開始直前において被相続人と同居していた親族
要件 | 内容 |
居住継続要件 | その宅地を取得した同居親族が、相続税の申告期限まで引き続き居住していること |
保有継続要件 | 相続税の申告期限まで保有していること |
B相続開始直前において被相続人と同居していない親族
要件 | 内容 |
親族関係要件 | 被相続人には配偶者及び同居している親族がいないこと |
家なき子要件 | 相続開始前3年以内にその相続人及びその相続人の配偶者が所有する家屋に居住したことがないこと |
保有継続要件 | 相続税の申告期限まで保有していること |
同一生計親族の居住用に使われていた宅地
相続発生直前において、同一生計親族の居住用に使われていた宅地は、次の居住継続要件と保有継続要件を満たせば、330㎡まで80%の評価減を受けることが出来ます。
要件 | 内容 |
居住継続要件 | その同一生計親族がその宅地を取得し、相続税の申告期限まで居住用として使用していること |
保有継続要件 | 相続税の申告期限まで保有していること |
なお、上記の要件にかかわらず、居住用として使われていた宅地であれば、配偶者が取得した場合には、無条件で330㎡まで80%減額を受けることが出来ます。
貸付事業用宅地等
被相続人の貸付事業用に使われていた宅地
相続発生直前において、被相続人の貸付事業用に使われていた宅地は、次の事業継続要件と保有継続要件を満たせば、200㎡まで50%の評価減を受けることが出来ます。
要件 | 内容 |
事業継続要件 | その宅地を取得した親族が、被相続人の貸付事業を承継し、相続税の申告期限まで貸付事業を営んでいること |
保有継続要件 | 相続税の申告期限まで保有していること |
同一生計親族の貸付事業用に使われていた宅地
相続発生直前において、同一生計親族の貸付事業用に使われていた宅地は、次の事業継続要件と保有継続要件を満たせば、200㎡まで50%の評価減を受けることが出来ます。
要件 | 内容 |
事業継続要件 | その同一生計親族がその宅地を取得し、相続税の申告期限まで貸付事業を営んでいること |
保有継続要件 | 相続税の申告期限まで保有していること |
イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
執筆日:平成29年3月13日
※上記コラムの内容は執筆日現在の法令に基づいて記載されたものですので、その後の改正等により法律が変更されることがありますので、ご注意下さい。