遺産分割協議がまとまらない場合

遺産分割協議がまとまらない場合

こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。今回のコラムでは、「遺産分割協議がまとまらない場合」についてご説明致します。

相続税は、相続発生から10カ月以内に申告書の提出及び納税を行う必要があり、一般的にはこの期限内において遺産分割の話し合いを行い、誰がどの財産を相続するかを決めることとなります。ただし、様々な理由により、相続人の話し合いのみでは遺産分割の合意に至らない場合があります。
本コラムでは、このように遺産分割協議がまとまらない場合、民法上、税務上の取扱いがどのようになるのかをご説明させて頂きます。

民法上の取扱い 

遺産分割調停の申立て

相続人だけでは遺産分割協議の合意に至らない場合、一般的には、遺産分割調停を申し立てることになります。
遺産分割調停とは、調停委員2名と裁判官(又は家事調停官)により構成される調停委員会が、当事者や関係者から事実関係やそれぞれの言い分を十分に聞いたうえで、中立的な立場から、双方の利益が公平となるように、適切な解決方法をあっせんしてくれる手続きです。
ただし、調停は、あくまで話し合いにより解決を図る手段となり、当事者のいずれかでも合意が得られない場合は、問題が解決しないという事になります。

遺産分割審判の申立て

遺産分割審判とは、いわゆる「訴訟」のことを言い、裁判官が当事者から提出された書類や資料、また双方の主張を元に、最終的に遺産分割の方法を「決定」する手続きです。従って、調停と異なり、当事者のいずれかの合意が得られなくとも、問題が解決するという事になりますが、一般的には、最終的な結論に至るまで数年、場合によっては、10数年程度はかかるようです。

税務上の注意点 

小規模宅地、配偶者の軽減、農地の納税猶予の適用がない

相続税の申告期限までに、相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合、小規模宅地の特例、配偶者の税額軽減及び農地の納税猶予といった各種特例の適用を受けることが出来ません。従って、相続税の申告は、これら各種特例の適用を受ける前の数字で申告し、各種特例を受けていない相続税を納付する必要があります
なお、小規模宅地の特例と配偶者の税額軽減については、下記の「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、3年以内に分割が整えば適用を受けることが出来、過大に納付している相続税があれば、申請をすることにより還付を受けることが出来ます。
ただし、農地の納税猶予については、法定申告期限までに分割が整っていなければ、永久に受けることが出来ませんので、農地の納税猶予の適用を検討されている方は、公正証書遺言を作成しておくなどの事前対策が重要となります。

申告期限後3年以内の分割見込書は必ず提出する

相続税の申告書を提出する時点で、遺産分割協議がまとまっておらず、小規模宅地や配偶者の税額軽減の適用を受けることが出来なかった場合で、遺産分割が整い次第、これらの特例の適用を予定されている方は、法定申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する必要があります。
この「分割見込書」の提出を失念してしまうと、その後、分割が整ったとしても前述の各種特例の適用を受けることが出来ませんので、非常に注意が必要となります。

 

イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆日:平成29年4月24日
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