失踪宣告と相続税の関係
こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水と申します。今回のコラムでは「失踪宣告と相続税の関係」についてご説明致します。
一般的に馴染みがある内容ではありませんが、7年間不在者の生死が明らかでない場合、失踪宣告という手続きにより死亡したものとみなされます。では、この失踪宣告により死亡したものとみなされた場合、相続財産を評価する時期や相続税の申告期限がいつになるのかという疑問が生じます。
本コラムでは、この「失踪宣告と相続税の関係」に関する疑問についてご説明させて頂きます。
失踪宣告とは
概要
行方不明者の生死が一定期間不明であった場合には、死亡したものとみなして手続きを行う事が出来る制度を失踪宣告といいます。一般的な失踪の場合には、上記の一定期間は7年間(普通失踪)となりますが、行方不明者が戦地や沈没した船の中にいた場合には、上記の一定期間は1年間(特別失踪)となります。
参考条文
民法第30条(失踪の宣告)
- 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
- 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
民法第31条(失踪の宣告の効力)
- 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したとみなす。
相続税の取扱いについて
失踪宣告により死亡したとみなされた場合、財産評価を行う時期や相続税の申告期限の取扱いについて、事例を用いてご説明致します。
EX
- 平成20年5月29日 Aさんが失踪
- 平成27年5月29日 Aさんが失踪してから7年が経過
- 平成27年6月 1日 Aさんの子が家庭裁判所に「失踪宣告申立書」を提出
- 平成29年8月10日 失踪宣告の審判
- 平成29年8月17日 失踪宣告の審判書の正本送達
- 平成29年9月 1日 失踪宣告の審判確定
財産評価の時期
上記の設例でご説明致しますと、失踪してから7年が経過した時点で死亡したとみなされるため、平成27年5月29日が相続発生日となり、課税時期は平成27年5月29日となります。つまり、失踪してから7年が経過し、死亡したとみなされた日が課税時期となります。
なお、戸籍謄本上は、「死亡とみなされる日」平成27年5月29日と記載されます。
相続税の申告期限
上記の設例でご説明致しますと、相続税の申告期限は、失踪宣告の審判確定日から10ヶ月となりますので、平成30年7月1日が相続税の申告期限となります。
相続税の申告期限は、「相続の開始があったことを知った日から10カ月以内」となっていますが、相基通27-4に、失踪の宣告を受け死亡したものとみなされた者の相続人又は受遺者については、「相続の開始があったことを知った日」を「これらの者が当該失踪の宣告に関する審判の確定があったことを知った日」に読み替えるとの記載がありますので、失踪宣告の審判確定日から10ヶ月以内が申告期限ということになります。
なお、戸籍謄本上には、「失踪宣告の裁判確定日」平成29年9月1日と記載されます。
イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
執筆日:平成29年5月29日
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