申告期限内に申告しない場合の小規模宅地の特例

申告期限内に申告しない場合の小規模宅地の特例

こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水と申します。今回のコラムでは「申告期限内に申告しない場合の小規模宅地の特例」についてご説明致します。

平成27年度の相続税の基礎控除額の引き下げにより、相続税の申告書を提出しなければならない方が大幅に増えました。ただし、大半の方については、小規模宅地の特例を受けることができれば、「申告義務はあるが、納税は発生しない」という事になるのではないかと思います。ここで、申告義務があることに気づかず、申告期限内に相続税の申告書を提出しなかった場合、小規模宅地の特例を受けることができなくなるのかという疑問が生じます。
本コラムでは、この「申告期限内に申告しない場合の小規模宅地の特例」についてご説明させて頂きます。

小規模宅地の特例とは 

制度(特定居住用宅地等)の概要

被相続人が生前、自宅の敷地として使用していた宅地については、配偶者、同居相続人及び一定の要件を満たす別居相続人が相続した場合に限り、330㎡まで80%の評価減を受けることができます。
例えば、相続人が3人いる被相続人の自宅敷地が70坪(約231㎡)で正面路線価が25万円である場合、特例適用前の評価額は231㎡×25万円=5,775万円となり、自宅敷地だけで基礎控除額(4,800万円)を超え、相続税の申告義務が発生します。ただし、小規模宅地の特例を使うことができれば、自宅敷地の評価額が80%減額となるため、5,775万円×20%=1,155万円となり、基礎控除額を大幅に下回ることになり、他に多額の財産がなければ、相続税の申告義務はあるが、納税は発生しないという事になります。

申告期限までに申告書の提出が間に合わなかった場合 

内容

相続発生から10カ月以内に、小規模宅地の特例を受ける旨の記載をした申告書を提出しなかった場合、小規模宅地の特例を受けることができず、多額の納税が発生するかというと、実はそうではありません。小規模宅地の特例は、期限内申告書、期限後申告書及び修正申告書の提出により受けることができます。簡単に言うと、申告期限を過ぎた後に申告書を提出したとしても小規模宅地の特例を受けることができます。ただし、あくまでも申告書を提出しなければ、この規定の適用を受けることができませんので、期限後といえども、申告書の提出が必要となります。

根拠規定

租税特別措置法第69の4⑥に、
申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む)に小規模宅地の特例の規定の適用を受けようとする旨を記載し、~中略~ その他一定の書類の添付がある場合に限り、適用する。
と記載があるように、期限後であったとしても、申告書を提出すれば小規模宅地の特例を受けることが条文から確認できます。

未分割と期限内申告及び期限後申告との関係 

小規模宅地の特例を受けることができるのは、その適用を受けようとする宅地について、相続人間において申告書の提出期限までに分割が確定している必要があります。
ここで、期限内申告書を提出期限までに提出する場合において、小規模宅地の特例を受けようとする宅地について、分割が確定していないときは、申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と一緒に提出する必要があります
※この見込書を提出しなければ、その後に分割が確定したとしても、小規模宅地の特例を受けることができません。

一方、期限内申告書を提出せずに、期限後申告書を提出する場合において、法定申告期限までに遺産分割が確定していれば、小規模宅地の特例を受けることができますが、法定申告期限までに遺産分割が確定していなければ、原則、期限後申告書を提出しても小規模宅地の特例を受けることができません

なお、申告書の提出期限から3年以内に遺産分割ができない場合には、上記の書類とは別に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を申告書の提出期限から3年を経過する日の翌日から2カ月以内に提出しなければならず、この承認申請書の提出が期間内になかった場合には、小規模宅地の特例は永久に受けることができませんので、注意が必要です。

 

イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆日:平成30年1月22日
※上記コラムの内容は執筆日現在の法令に基づいて記載されたものですので、その後の改正等により法律が変更されることがありますので、ご注意下さい。

 

その他の関連コラムはこちら