配偶者居住権の評価方法
こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。
今回のコラムでは、「配偶者居住権の評価方法」についてご説明致します。
平成30年7月13日に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が公布され、相続に関する法律の一部が改正されました。その改正の一つとして、配偶者居住権という新たな権利が民法上創設されることになった為、民法改正に伴い、平成31年度の税制改正において配偶者居住権等の評価方法や取り扱いが定められることになりました。
本コラムでは、この「配偶者居住権の評価方法」についてご説明させて頂きます。
配偶者居住権とは
配偶者居住権の税務上の評価方法をご説明する前に、そもそも、配偶者居住権とはどのような権利で、どのような特徴があるのか等をご説明させて頂きます。
配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、居住用建物の全部を対象とした使用貸借権を意味します。具体的には、被相続人が所有していた居住用建物に相続開始時点で配偶者が居住していた場合には、配偶者はその居住用建物を終身又は一定の期間、無償で使用することができます。この権利を「配偶者居住権」といいます。
なお、配偶者居住権は、遺産分割協議、遺贈又は家庭裁判所の審判により取得することができます。その他の特徴としては、配偶者居住権は原則として登記され、配偶者の死亡と同時に消滅し、また、その性質上、第三者に譲渡することは出来ないなどの特徴が挙げられます。
配偶者居住権の評価方法
評価方法の概要
配偶者居住権が設定された建物は、次の二つに分けて評価します。
- 配偶者居住権
- 建物所有権
例えば、元々の建物の評価額が1,000万円で、配偶者居住権が700万円の場合、建物所有権の評価額は1,000万円-700万円=300万円となります。つまり、配偶者居住権と建物所有権の合計が元々の評価額と一致します。
なお、配偶者居住権が設定された建物が建っている土地についても同じ考え方となり、土地の評価額は、配偶者居住権に基づく土地利用権と土地所有権に分けて評価することになります。
評価方法
建物
- 配偶者居住権
建物評価額 - 建物税評価額 × (残存耐用年数※1-存続年数※2) ÷ 残存耐用年数※1 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率※3 - 建物所有権土地
建物評価額 - 配偶者居住権の価額
土地
- 配偶者居住権に基づく土地利用権
土地評価額 - 土地評価額 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率※3 - 土地所有権
土地評価額 - 配偶者居住権に基づく土地利用権の価額
※1 法定耐用年数(木造であれば22年) × 1.5 - 築年数
※2 配偶者居住権が終身の場合は、配偶者の平均余命年数
※3 2020年4月1日以降の法定利率は3%
イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
執筆日:令和元年5月1日
※上記コラムの内容は執筆日現在の法令に基づいて記載されたものですので、その後の改正等により法律が変更されることがありますので、ご注意下さい